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エンパワーメント・カウンセリング&コーチングに必要な技法(スキル)

一般的にカウンセリングは傾聴スキルそしてコーチングは質問スキルが主な技法といわれています。エンパワーメント・カウンセリング&コーチングも同様、傾聴、質問を使用しますが他にも支援者(カウンセリン&コーチングを行う人)は下記のスキルを使用します。

1.積極的傾聴(active listening)
傾聴のスキルには次のようにいろいろな方法や段階があります。

1)はげまし encourage
はげましとは、支援者が来談者の話しを聴いていることを示す一つのしるしです。無表情にならないで、視線をあわせたり、うなずいたり、ボディーランゲージ(身体言語)とともにことばで共感していることを伝えることは大切です。
相づちや黙って聴いたりするのが「はげまし」になります。

2)いいかえ paraphrase
いいかえは相手の気持ちを受け止め、相手のいってきた言葉を正確に相手に返します。
効果的ないいかえとしては
①来談者の名前および代名詞のいいかえ
「君が!」「○○さんが!」 
②来談者の重要な語句のいいかえ
「○○を達成したって!?」「○○へ行ったの!」
③来談者のことばの本質へのいいかえ
「最近、○○さんとうまくいっていないのですね」

3)要約 summarization
要約は、相手の語った重要部分をくり返し、短縮し、具体化したものです。
これは、質問、いいかえ、感情のフィードバックなどとあわせて使用すると効果的です。
「あなたがいいたかったことは○○ということですね」

4)感情の反映 reflection of feeling
感情の反映にとって大切なのが共感的理解(empathy)です。共感的理解は来談者の身になり、来談者の目を通してその世界を見ること、つまり来談者とともに考え感じることが必要です。感情の反映のためのステップには3つあります。
①来談者の感情・気持ちを理解(感情・気持ちの命名)して受け止める。
がっかり、悲しい、さみしい、爽快、穏やか、ねたみ、うれしい…
②来談者の感情・思考の引き金になった背景・状況を理解する。
③ 理解したことをあなたのことばに置き換えていいかえ(反映)をします。
「あなたは……と感じているようだね」「……と感じているように聞こえるが・…」
「……のように受けとられますが」 「君はあのとき、落ち込んでいたんだね」
感情の反映は来談者の自己開示を促し問題整理・解決の援助的技法です。

2.質問法(questioning)
来談者の気持ちや考え方を理解するのに有効なのが質問法です。質問には答え方が自由な開かれた質問と答え方が「はい」「いいえ」など限られた、閉ざされた質問法があります。それぞれの質問は下記の状況のとき有効です。

1)開かれた質問と閉ざされた質問

開かれた質問 open questioning
①来談者との会話を始めるとき
②来談者に話しのある点をさらに詳しくのべてもらうとき
③相手に具体的な行動の事例を引き出すとき
④相手の感情に注意を集中するとき
⑤仮定質問「もし~だったら」という聞き方

閉ざされた質問 closed questioning
①特定の必要な情報を得るとき
②相手がオ‐プンに語ってこないとき

2)「Why」、「How」と「What」の3つの質問
対面で「なぜ?」と聞くと、来談者を萎縮させたり、創造的で積極的な行動を妨げたりします。特に状況を聞くのならいいのですが相手に理由を聴くときはなおさらです。
詰問の「Why」ではなく「How」の「どうしたら上手くいくだろうか?」「どうしたら同じ失敗をくりかえさなくてよいだろうか?」
「What」の「何か他の方法はなかったのだろうか?」「何が原因だったのだろうか?」など、尋ねるように質問しましょう。

3)「他には?」、「重要なのは?」と「具体的には?」の3つの組み合わせ
より来談者がかかえている問題の本質に近づく質問として「他には?」と思考の拡大を図る質問、「重要なのは?」と思考の収斂を図る質問そして「具体的には?」と塊をほぐす(チャンクダウン)していく質問の3つを組み合わせることによってより本質に近づいていきます。

3.フィードバック feedback
フィードバックとは、支援者あるいは第三者が来談者のことをどうみているかというデータを与えることです。
データによって来談者は自らの現実の行動を客観的にとらえることができます。
フィードバックがより効果的なときは、次のような場合です。
1)来談者が主体的に仕事を取組もうとしているとき
2)フィードバックが短所だけではなく、長所を強調するとき
部下や来談者に対しては短所の方が見えやすいものです、意識して長所をさがしましょう
3)フィードバックが具体的で、特定的で、詳細で、厳密であるとき
4)可能な限り、相手の了解を得てフィードバックする

4.自己開示 self-disclosure
自己開示とは、支援者の考え方や感じを、来談者に率直に伝えることです。
自己開示は二人称(あなた)ではなく一人称(わたし)を主語にした表現です。
すなわち“私は”という代名詞を用いた表現法になります。
・好ましい表現方法 「わたしは残念に思う」 
好ましくない表現方法 「なぜあなたは最後まで努力しなかったのか」
・好ましい表現 「わたしはうれしかった」
好ましくない表現 「あなたはいい人だ」
感情を表わすことばや感情の表現は、自己開示ではとくに重要です。
「You  message(メッセージ)」、「You  statement(ステイトメント)」に対して「I message」、「I  statement」ともいわれています。

5.情報提供 information
イギリスの経営学者フォレット(M.P.Folet)は、たとえ命令や指示であっても、その背景となる状況を伝えることによって、それが来談者に屈辱感なしに受容されることを発見しました。それを「状況の法則」と読んでいます。これは支援者が来談者に命令や指示を与えるのではなく、状況が命令や指示をしているのだという考え方です。

6.要望 request
要望は来談者との信頼をベースに、支援者の強い意志が反映されたものです。
来談者は要望されることで、自分でも気づいていなかった能力や可能性に気づき、未だかって経験のない行動をとることになります。つまり要望には来談者を成長させるという可能性があります。要望は来談者を「成長させたい」という意図の基に行うものです。
要望するときの留意点
・可能な限り相手の了解をとる。
「要望してもいいですか」
・無理に自分の意見を押しつけたり、とらわれ過ぎない。

7.提案 propose
提案は支援者のもつ知識や経験、アイデア、戦略等を伝え、来談者に新しい視点や可能性を提供し、来談者の自発的な行動を促します。
そして「提案」は指示や命令とは違い、来談者が受け入れやすい方法で異なった視点を与えるのがねらいです。
例 「このような方法もあるがどうだろうか?」
「以前このような方法で上手く行った人がいたが、この方法はどうだろうか?」
提案するときの留意点
・提案を受け入れるか否かは来談者に選択権を委ねる。
取り入れない場合もその選択を尊重する。それは来談者が発見した方法や手段を尊重するという意味でも大切。
・提案に対しては「Yes」か「No」もしくは「逆提案」の形で来談者に意思表示してもらう。
・可能な限り、来談者の了解を得て伝える。
・頭に浮かんだアイデアは率直に伝える。
・新たな視点(可能性)を与えるということが重要。
・無理に自分の意見を押しつけたり、とらわれすぎないようにする。


マイクロカウンセリング(アレン・E・アイビィ著 川島書店)より引用。
筆者一部加筆

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